Barbaroついに安楽死
2006年のケンタッキーダービー馬のBarbaroが現地時間29日(月)朝、入院先のペンシルヴァニア大学のニューボルトンセンターで安楽死処分となりました。私自身も、Barbaroの大ファンだったので、個人的な関わり、感想も交えつつ振り返ってみたいと思います(たくさんの記事を参考にしていますが、整理するのが大変なので引用記事へのリンクは割愛します)。
骨折した右後脚の治療過程で、左後脚に蹄葉炎を発症。そして左脚を庇ううちに、骨折した右後脚に負担がかかるようになっていたようです。さらに、両後脚が使えなくなったため、両前脚にも蹄葉炎を発症していました。そして、週末に右後脚にボルトを2本埋めるという最後の「危険な賭け」に出たものの、月曜日の夜に手術以来はじめて苦しみだしたため、やむを得ず安楽死という運びになったようです。手術以来一貫して大変おとなしく、一度も暴れるようなことはなかったそうです。
■Barbaroの軌跡
Barbaroの存在を初めて知ったのは、3戦目のローレルフューテュリティ。本コラムでは度々触れてきましたが私はイマイチ君なDynaformer産駒のファンなので、Dynaformer産駒の2歳馬の動向はチェックしていました。しかし、正直言って3冠レースにおいてはそれほど期待をかけていませんでした。なぜならば、Dynaformerの産駒は「芝ダート問わない」、「スタミナがある」、「成長力がある」反面、「晩成」、「先行力がない」、「スピードがない」、「勝負弱い」という3冠を戦う上では致命的な欠点を持っていたので、3冠路線で期待できるとすれば、相対的にスタミナが生きるベルモントSぐらいではないかと思われたからです。
ところが、Barbaroは芝とはいえ、「2歳のステークス戦」を「先行」して「3連勝」で「レコード勝ち」」をおさめたのです。このあらゆる側面でDynaformer産駒の特徴の反対を行くレースを見て、「今年はこの馬を追いかけよう」と思いました。Babaroは年明けに芝を使ったあと、ホーリーブルS、フロリダダービーを勝ちました。両レースとも時計的にも見た目的にもそれほど派手なレースではありませんでしたが、不良馬場(ホーリーブルS)や不利な外枠(フロリダダービー)から先行して押し切ったところに、この馬の勝負強さが現われていました。
毎年ケンタッキーダービーでは1頭選んで応援しているのですが、単勝7.1倍に推されたBarbaroは過去数年の中では一番期待できる馬でした。とはいえ、率直に言ってまさかあんなに強い勝ち方をするとは思ってもいませんでした。フロリダダービーの勝ち方が前年の勝ち馬High
Fly(ダービー11着)と似たようなレース内容でしたし、Dynaformer産駒らしからぬ先行力がある代わりに、Dynaformer産駒らしいスタミナが不足しているのではないかと不安を持ったからです。しかし、実際にはスタミナとスピードの両者を兼ね備えた馬でした。
今となってはプリークネスSの事故の原因を確かめる術はないのですが、私見を述べさせていただけば、骨折したのは1回目に飛び出したときではなく、2回目にスタートした後。おそらく、最初に飛び出した時に興奮してしまったことが、2度目のスタート後のミスステップ、そして骨折につながったのでしょう。馬運車で運ばれるBarbaroを見送りながら、鞍を持ったまま立ち尽くすプラード騎手のなんともいえない悲しい顔と、彼を支えた競馬場職員さんの姿は忘れることはできません。[写真1]
[写真2]
事故後すぐに行なわれた手術に際して、リチャードソン医師は「これはコイントスだ」と語りました。しかし、どうみてもそれは五分の勝負ではなく、最初からコインが裏に出ていることは明白で、手術とリハビリはその裏に出たコインを表に医療の力でひっくり返すためのプロセスでした。
骨折は順調に回復したものの、リハビリの途中で懸念されていた通り左後脚に蹄葉炎を発症しました。1度はそれを乗り越えて退院し、正月明けにはいったんはギブスを外すに至りました。しかし、その直後の1月11日に再発。結局これが致命傷になってしまいました。その後の病状は一進一退で、楽観的な記事が書かれる日もありましたが、ダービーの中継を担当するMSNBCが「安楽死にすべきだ」という記事を出したので、相当厳しい状況であることは漏れ伝わってきました。結局週末に再手術したものの、「ついにクリティカルポイントにいたった」(Courier
Journal)と報じられ、昨日安楽死処分となりました。
安楽死後もジャクソン氏はまず、「応援してくれたファンに感謝します」と述べました。そして、「我々が与えた愛を代償に得たものは、悲しみだった」、と語りました。
■Barbaroが与えた影響
Barbaroが与えた影響を挙げておきます。
(1)獣医学への貢献
「Barbaroは獣医学の世界に多大な経験を与えました」語ったリチャードソン医師はその一方で、「私は確かにたくさんのミスを犯しました」とも語りました。おそらく現場レベルではたくさんの判断ミスがあったかと思います。もしかしたら、もっとうまくやれば生き延びることができたかもしれません。しかし、そもそも誰もやったことがないようなリハビリなので、ミスがあるのは当たり前のことです。同医師は「明日同じ症例に関わったら、もっとうまくやる自信がある」とも語っています。今後世界レベルでこの症例が生かされていけばよいと思います。
Barbaroの医療チームがエクリプス賞の特別賞を受賞したのは当然のことだと思います。馬主のジャクソン夫妻も、主治医のリチャードソン医師も、「ファンのエモーショナルな支持が非常に力を与えてくれる」と常々言っていました。それは単なる美辞麗句ではなく、率直な感想だと思います。あのような前例のない治療では、ファンの支持が夫妻の治療への意志を支え、医療チームをモティベートしたのだと思います。
(2)オールウェザー化への影響
「Barbaroの事故はダート競馬の危険性を直接立証したわけではない」、ということは関係者なら誰もが認めるところです。しかし、議論が賛否両論二分しているときの判断は、象徴的な事象に大きく左右されます。オールウェザー化で議論が大きく二分された年の3冠レース(Barbaro)とブリーダーズカップ(Pine
Island)の両方で大きな事故が発生したことは、人工馬場への流れを大きく加速するだろうと言われています。
(3)競馬人気への影響
Barbaroのニュースは競馬ファンを超えて国民的な関心を呼び、日本でも衛生放送(CNNやABC)のニュース番組で度々報じられていました。安楽死が発表された後、NBCのHPにはあっという間に600を超えるメッセージが寄せられました。しかし、(当然ではありますが)この関心が低迷する競馬人気の回復につながると考えている人はほとんどいません。むしろ、危険で残酷なスポーツであるというイメージを植え付けてしまったと考える人が大多数です。
(4)引退の早期化と空洞化の加速
3冠レース勝ち馬の保険料への影響もあるかもしれません。もし高騰するようなら、さらにスターホースの引退が早まる可能性があります。
北米競馬の人気が低迷する理由は明白で、それはスターホースが出ないからです。相撲の世界では「お金は土俵に埋まっている」などと言われますが、北米競馬の場合、お金は本来の土俵であるところの競馬場ではなく、牧場とセリ市場に落ちています。そのため、スターになったとしてもすぐに引退してしまうのです。NTRAが発表したBCの拡張はそうしたレースの空洞化への1つの対抗策ですが、どの組織も一元的に問題に取り組む体力・組織力がないので、やれることは限定されてしまっています。
Barbaroの事故は、スターホース候補を手にした馬主の行動をさらに保守的にしてしまう可能性があります。
(5)Dynaformer、後継種牡馬の喪失
Lear
Fan、Silver
Hawk、Kris
S.など、ロベルト系の種牡馬は長寿で息が長い反面、孫の種牡馬は苦戦しています。Dynaformerも例外ではなく、今のところ後継種牡馬には恵まれていません。近年の活躍馬のPerfect
Driftはせん馬、Dyneverはサウジアラビアに売られました。自身の年齢(22歳)を考えると、Dynaformerは本当に貴重な後継候補を失いました。
■ 最後に
長い闘病は終わりました。Barbaroはスピードとスタミナを証明したものの、成長力と繁殖力を証明することはできませんでした。残念ですが、事故直後のNY
Postの記事にもあったように、「起こってほしくないと願うような悲劇だが、残念ながらこれも競馬の一部」なのだと思います。
Barbaroの冥福を祈るとともに、ジャクソン夫妻、リチャードソン医師をはじめとして治療に携わった関係者の皆さま、お疲れ様でした。
ベイヤー指数で振り返る2006年北米競馬
ベイヤー指数はタイム指数なので、毎年変わってしまう相手関係によって数値を出すクラシフィケーションと比べると、理論的には年度間の比較に向いているといえます。もっとも、タイム指数の難点は理論ではなく、基準タイムの設定という実践面にありますが。
見慣れない人には意味を読み取りにくいと思いますので、簡単な目安を挙げておきます。
・1ターン(〜8F)と2ターン(8F〜)では異なる数値体系。
・牡馬のG1の平均が113、G2の平均が106。
・牝馬はスプリントで牡馬マイナス3程度で、距離が伸びるほど差が広がる。 2歳時は互角だが、年齢が上がるにつれて差が広がる。
【1】古馬中距離(代表馬:Invasor、Lava Man、Bernardini)
| G1 |
2003 |
116.7 |
─ |
| 2004 |
113.4 |
↓ |
| 2005 |
112.6 |
→ |
| 2006 |
111.0 |
↓ |
| G2 |
2003 |
106.6 |
─ |
| 2004 |
107.6 |
↑ |
| 2005 |
106.3 |
↓ |
| 2006 |
104.8 |
↓ |
*2003年はドンHと、サンタアニタHが含まれていない
* 前年との比較して±1.0未満なら横ばい(→)と表示
要するにBCクラシック部門。→[路線図]
G1・G2ともに低下傾向にある。東海岸のサラトガ以降の数字がやや抑えられていた感はあったものの、他の部門が下がっているわけではないだけに、際立つ。昨年は全部もんを通じて「名馬のメルクマール」120が一度も記録されなかった。
G1の平均ベイヤーは113と言われているので、111.0は他の年が高いというより水準と比べて低い。G2も然りで、平均(106)に対して、1.2劣る。
原因としては、おそらく昨秋から今春に相次いだ古馬の一線級の引退がある。昨年のBC前後から相次いだ有力馬の大量引退(故障や種牡馬オファー)は懸念どおり、レベルの低下を招いた。
Invasorの活躍は素晴らしかったものの、それに次ぐ馬達が見当たらず、むしろBernardiniやDiscreet Cat(シガーマイル)など、3歳馬の活躍が目立った格好。そのInvasorにしても、歴代の一流馬と肩を並べるにはスピード能力という面で証明すべきものが残っているように思われる。
結論:低レベル
【2】3歳牡馬(代表馬:Bernardini、Barbaro)
| G1 |
2003 |
─ |
─ |
| 2004 |
105.2
|
↑ |
| 2005 |
106.2
|
↑ |
| 2006 |
108.3
|
↑ |
| G2 |
2003 |
─ |
─ |
| 2004 |
104.4
|
↑ |
| 2005 |
102.0
|
↓ |
| 2006 |
103.0
|
↑ |
*2003年はデータ不足により割愛
要するに3冠路線。→[路線図]
一方、レベルが高めだったのがこの3歳牡馬。
シーズン序盤こそ目立った数字は見られなかった(そのためG2が低い)が、ブルーグラスS(116)あたりから高い数値が見られ始め、ケンタッキーダービーで111、プリークネスSで116と、水準以上を記録し、平均でも前年を2以上上回った。
近年3歳馬は古馬に対してやや不利だったが、今年は古馬が丁重なことも手伝い、古馬相手にも好成績を残した(注:データは3歳限定戦のもので、3歳馬の古馬戦でのデータは【1】に含まれている)。
ダービー馬こそ残念な結果になったが、今のところ比較的順調に走っている馬が多いので、今後の飛躍が期待される。
結論:若干高レベル
【3】スプリント(代表馬:Thor's Echo、Bordonaro)
| G1 |
2003 |
111.9
|
─ |
| 2004 |
107.8
|
↓ |
| 2005 |
107.0
|
→ |
| 2006 |
110.2
|
↑ |
| G2 |
2003 |
107.0
|
─ |
| 2004 |
108.8
|
↑ |
| 2005 |
105.3
|
↓ |
| 2006 |
104.2
|
↓ |
*2003年のG2はデータなし
・スプリント部門。→[路線図]
・スプリント戦のレベルは相手関係よりも馬の調子で決まる部分が大きく、G1とG2の差が明確ではない。2004年の牡馬G2(112.2)はG1(110.1)よりもレベルが高かった。昨季序盤、Boronardoが115記録したのも一般戦でのものであった。
・とはいえ、一応分けてみてみる。今年はG1は上昇、G2は低下。G1はかなりの上昇が見られるが、今年の上昇には、牝馬限定のG1(4戦)の平均が99.2から110.3に上がったことが寄与している。混合戦に限定してみれば、過去3年で110.1→110.0→110.1と、実はほとんど変化していない。
・G2に関して言えば、2年連続で低下傾向。しかも、2004年と比べて4.4も下がってしまった。ただ、こちらは牝馬が低下傾向(103.6→102.4→100.8)で、その影響を受けた格好。牡馬に関しては下がってはいるものの(112.2→107.9→106.6)、106はクリアしている。
結論:普通
【4】牝馬(3歳・古馬)(代表馬:Round Pond、Fleet Indian、Spun Sugar)
| 3歳 |
G1 |
2003 |
100.7
|
─ |
| 2004 |
99.9
|
↓ |
| 2005 |
98.3
|
↓ |
| 2006 |
93.9
|
↓ |
| G2 |
2003 |
96.0
|
─ |
| 2004 |
95.6
|
↓ |
| 2005 |
94.2
|
↓ |
| 2006 |
92.3
|
↓ |
| 古馬 |
G1 |
2003 |
105.8
|
─ |
| 2004 |
102.9
|
↓ |
| 2005 |
101.5
|
↓ |
| 2006 |
101.1
|
→ |
| G2 |
2003 |
103.6
|
─ |
| 2004 |
98.6
|
↓ |
| 2005 |
102.1
|
↑ |
| 2006 |
98.3
|
↓ |
* 2003年はデータが不足しているので参考程度
*NYRA3冠路線と、BCディスタフ路線。古馬のスプリント戦はスプリント部門に参入。
・ディスタフ部門。→[3歳][古馬]
・どうしようもない低落傾向。タイム指数残酷也(笑)。
・特に3歳戦のG1(93.9)、G2(92.3)というのは、BCジュヴェナイルフィリーズの平均(95.9)よりもかなり下で、深刻な低レベル。古馬のG1はそこまで大きな下落ではないし、一応100を保っているのでよしとすべきか。もっとも古馬G2は2005年に上昇したが、2004年の水準に戻ってしまった。
・BCディスタフのベイヤーは100で、平均(107)よりもかなり低かったが、これは路線全体の低調を裏付けるものであったか。
・2歳や3歳の状況を考えると、2007年もかなり層が薄くなりそう。南米馬からの移籍馬に席巻の余地ありか。
結論:低レベル。3歳は深刻。
【5】2歳牡馬(代表馬:Street Sense、Tiz Wonderful)
| G1 |
2003 |
95.6
|
─ |
| 2004 |
95.2
|
↓ |
| 2005 |
98.0
|
↑ |
| 2006 |
96.5
|
↓ |
| G2 |
2003 |
─
|
─ |
| 2004 |
95.7
|
↓ |
| 2005 |
94.4
|
↓ |
| 2006 |
95.0
|
↑ |
・ジュヴェナイル部門。→[路線図]
・この部門は、あくまで3冠路線のための準備期間なので、準備期間に関する陣営の考え方の違いがレベルに反映される。従って、あまり大きな結論を得ることはできない。そのことを踏まえた上で言えば、
・レベルが高いといわれた昨年の3歳馬は、2歳時(2005年)からG1で高い数値を記録していた。昨年はそこそこというレベル。BCジュヴェナイルは平均(98.4)を大きく上回った(108)。これは昨年(104)に続くもので、これは今後に向けて期待できる。
・もっとも、2ターンでベイヤー100を超えたのはBCを含めて2戦のみで、全体の100越えも一昨年の18頭から7頭に減少している。これが仕上がりの遅さを繁栄したものなのかレベルを反映したものなのかは、今後の結果を見ないと結論が出せない。
結論:平均
【6】2歳牝馬(Dreaming of Anna、Rommance in Diane)
| G1 |
2003 |
91.7
|
─ |
| 2004 |
90.0
|
↓ |
| 2005 |
88.2
|
↓ |
| 2006 |
84.7
|
↓ |
| G2 |
2003 |
85.5
|
─ |
| 2004 |
85.8
|
↑ |
| 2005 |
81.5
|
↓ |
| 2006 |
76.0
|
↓ |
・JF部門。→[路線図]
・2歳戦の低下傾向と、3歳・古馬戦の低下傾向がものの見事にリンクしている。
・そこまでレース数が多いわけではないので安易な結論はよくないものの、牝馬は全体的にレベルが落ちてきている。
・牝馬戦でベイヤー85を切るレースは前半飛ばしすぎたため、ラストの1ハロンが15秒近くかかってしまうパターンが多い。そういう意味ではスピード能力の問題というよりも、距離適性、またはレースでの戦略の問題といえるかもしれない。
結論:低レベル
【7】芝(参考)(代表馬:Aragorn、Miesque's Approval、Showing Up)
| 牡馬 |
G1 |
2004 |
107.7 |
─ |
| 2005 |
107.8 |
→ |
| 2006 |
106.9 |
→ |
| G2 |
2004 |
102.1 |
─ |
| 2005 |
103.0 |
→ |
| 2006 |
102.9 |
→ |
| 牝馬 |
G1 |
2004 |
100.8 |
─ |
| 2005 |
101.3 |
→ |
| 2006 |
101.5 |
→ |
| G2 |
2004 |
97.7 |
─ |
| 2005 |
98.2 |
→ |
| 2006 |
100.9 |
↑ |
芝部門。→[牡馬][牝馬]
予想通り、ほとんど変わらず。
これはレベルが一定に保たれているというよりも、芝のベイヤー指数というものの特質によるものと思われる。芝のG1ではほぼ自動的に106〜108程度の数字がつくようになっていて、芝に関しては「上りタイムの方が重要で、ベイヤー指数はあまり使えない」とベイヤー氏自身が著書で述べている。
特に12ハロン戦では下級条件戦が用意されていない上にスローペースになることも多いので、精度を欠くものになっている。
よってこれは参考扱い。個人的には、8〜10Fのベイヤーはもう少し精度を上げられる気はします。
■考察
結論的に言えば、全体的に低調。牡馬は決して高いとはいえないが、明け4歳に光明、牝馬はレベルが低いだけでなく、低落傾向。
このように少なくともタイム指数の1つであるベイヤー指数から見た場合、北米のダートはあまりレベルが高いとはいえない1年でした(この結論と、ICでの米国馬の相対的優位を比較すると面白いかもしれません)。
原因を簡単に述べるのは危険ですが、ちょっと考えてみますと・・・
ここ数年、競馬におけるビジネス的な成功を、レースではなく生産プロセスに求める傾向がより強くなりました。実力が十分に証明されたとはいえない馬が引退すると200頭近い種付けを得られるケースも目立つようになりましたし、景気のいい話が聞かれるのはレースよりもセールになってきました。その結果、レースの空洞化が進んでいるように思います。
この点は10億円単位での成功が期待できる3冠路線のレベルが、低下するどころか、却って上昇しているという点からも裏付けられるかもしれません。逆に、それ以外の路線の低調で、特に牝馬は目を覆うばかり。このようなレースの空洞化への危機感が、BCの拡張につながったのは確かだと思います。
また、2006年の古馬路線は、ケンタッキーシンドロームの影響を受けた世代(01・02年生まれ)が主力でした。これが層の薄さに少なからず影響を与えたと思います。
とはいえ、BarbaroとBernardini、Henny Hugesこそ引退しましたが、明け4歳馬はここまで比較的順調に来ています。また、InvasorやThor's Echoなど、現役続行を宣言した馬も多くいます。突然スターホースが現れるが北米競馬の魅力でもあります。2007年の北米競馬に期待しています。
ケンタッキーダービー戦線 2007-01:クロフネの甥は3着
レース結果については、リンクを参照してください。
■ルコントS(フェアグラウンズ・D8F)
フェアグラウンズはニューオリンズにあるため、昨年はハリケーンの影響で中止されたレース。
Hard
Spunが6馬身差で逃げ切り4戦全勝。内容的にはかなり強かったです。もっとも、距離ははやや心配。鞍上のピノ騎手は「追う必要がなかった」とコメントしていますが、ラスト2ハロンが26.77かかっています。9ハロンぐらいまでは大丈夫だと思いますが。次走はルイジアナダービー。
Danzig産駒ですが、ペンシルヴァニア産という変わり種です。
予想ベイヤー:98〜102
■サンラファエルS(サンタアニタ・D8F)
3番手から抜け出したNotionalが4馬身半差の圧勝。過去2戦人気を裏切ってきましたが、ブリンカーをつけたのがプラスだったそうです。オニール厩舎はこれでGreat
Hunter、Liquidityに続く3頭目のプロスペクト誕生。レースのレベル的には去年(Brother
Derek)や2004年(Imperialism)よりは若干落ちるかもしれません。
実はケンタッキーダービーではプリンカーは割引材料と見られています。去年もそのような記事を見かけました。ブリンカー自身がレースでマイナスになるというよりは、「よほど折り合いに問題がある場合にのみブリンカーを着用する」という感じだと思います。ですので、DRFも「(オニール師は)5月にはいらないが、今の時点ではブリンカーが必要だと判断したのだ」と伝えています。
このレース、もう1つの注目はクロフネの甥Grapelli(Thunder
Gulch×Bella Bellucci)。これまでもスピードにやや難があったのですが、この日も3コーナーの時点で先頭から15馬身(笑)。最後は持ち前のスタミナを見せて、2着と頭差の3着まで追い込んできました。8ハロンは明らかに短く、ケンタッキーダービーどころかベルモントS向きかもしれません。ただ、レース内容は決して悪くなく、また、アメリカのダートは100m伸びるごとに力関係が一変しますので、今後は楽しみになってきました。Giacomoも年初はこんな感じでしたよ。
予想ベイヤー:96〜100
騎手の話題を2つ
■ルメール騎手、ルジェ厩舎の主戦に。
Christophe
Lemairepremier jockey des ≪ Rouget ≫ a Paris (Paris Turf)
ルジェ厩舎(J-C
Rouget)、クリストフ・ルメール(Cristophe
Lemaire)騎手と主戦騎手契約を結んだことを発表しました。
ルジェ厩舎はフランス南西部、スペイン国境近くのポー(障害で有名な競馬場)に本拠地を置く厩舎で、
2004年にサンタラリ賞(Ask
For the Moon)でG1初勝利を挙げてからは、中央開催でも活躍馬を多数出していて昨年のリーディングでは、ファーブル(Rail
Link)、ロイヤー・デュプレ(Pride)両厩舎につづく3位に入っています。(Rougetの成績は[こちら])
ルジェ厩舎の従来の主戦はWSJSでも来日したイオリッツ・マンディザバル(Mendizabal)騎手。同師によると、マンディザバル騎手との契約を切るわけではなく、ルメール騎手がパリの開催で騎乗し、マンディザバル騎手はセカンドジョッキーとして地方開催で騎乗するとのこと。
この突然の発表に、Paris-Turf紙は「スキャンダルか?」と色めきたちましたが、これに対しルジェ師は、「スキャンダルではない。純粋にプロフェッショナルとしての決断で、誰かに吹き込まれたわけでもないし、制裁でもない。この決断は私1人に帰属する」と完全否定。
ルメール騎手は、Prideのロイヤーデュプレ厩舎の他に、Divine
Proportionsでバリー(Bary)厩舎&ニアルコスファミリーとの契約も結んでいました。しかし、先日ニアルコスファミリーとの契約が変更され、騎乗機会が減ったため、ルメール騎手的にはセカンドオプションとしてこの契約を選択したようです。
一方、マンディザバル騎手といえばスペイン北部のバスクの出身で、ルジェ師が本拠を置くフランス南西部のスタージョッキー。Paris
Turf紙としてはそんな地元の主戦騎手を簡単に主戦の座を降ろすはずもなく、また、12月下旬以降に急遽決断したことにも不可解さが残っているようです。
昨年ルジェ師はジェルマンス(Germance)でブリーダーズカップフィリー&メアターフに参戦しました。その前哨戦のクイーンエリザベス2世チャレンジCではマンディザバル騎手を起用したのですが(4着)、本番ではスミヨン騎手を起用しました(10着)。
また、ルジェ師がルメール騎手について「フランス国境を越えて活躍できるたぐい稀な騎手」とコメントしているように、師はルメール騎手の日本やドバイ、香港などでの国際的な実績を評価しているようです。どうやら、これから国際的な舞台に打って出るために、国際経験豊かなルメール騎手が必要だと考えたようです。
また、今後ルメール騎手と他の厩舎の関係がどうなるかも注目していきたいと思います。
■ベイリー騎手のインタビュー
BloodhorseTalkin' Horsesというコーナーがあります。これは去年からあるのですが、アメリカの一流騎手や調教師がファンの質問に答えるというチャット企画です。かなり突っ込んだ話題も多く、なかなか面白いのですが、全部分量が多いため私もまだ読んではいません。少しずつ読んでいって面白かった部分をご紹介できればと思います。
まず最初は昨年引退したベイリー騎手。
昨年の1月に引退後、解説者に転向して、昨年のBCでも解説を務めました。若い頃はアルコール中毒などを患ったこともあったのですが、シガーに騎乗した頃からのベイリー騎手というのは一切の妥協を許さない、プロフェッショナリズムの塊のような人だったと思います。冗談を言うような印象はあまりないのですが、パット・デイ騎手によればかなりユーモアもあるみたいです。
| ─ 今まで乗った中で一番いい馬は?
シガー。調教で乗ったことがある中ではゴーストザッパー。
─ 仲のよい騎手は?
何人かの友人はいるが、(騎手同士で友情を築くのは)非常に難しいことだ。
騎手として成功するためには、競馬場に友情を持ち込んではいけない。
また、騎手とそのエージェントは、他の騎手との関係を犠牲にしても一番いい騎乗を取ろうとするものだからだ。
─ 何故トップジョッキーがケンタッキーダービーを勝つのは難しいのか
騎乗馬を選ぶのが難しいからだ。確かにトップジョッキーは、騎乗馬を選ぶことができる。
しかし、陣営はだいたい3月、つまり本番2レース前には乗る馬を決めることを求める。
3月の時点で2ヵ月後良くなりそうな馬を選ぶのは至難の業である。
─ 重馬場に強い馬とは?
一般的に重馬場では、小さい馬のほうが有利だと思う。
─ いい調教師とは?
並の調教師が管理しても、才能がある馬ならいい成績を残すことができる。
しかし、本当に良い調教師は、そのような馬の活躍期間を伸ばすことができる。
|
他には「復帰は100%ない」などとも言ってました。
騎手同士で友人を作るのは難しい、というのが印象に残りました。北米のトップサーキット(ニューヨークや南カリフォルニア)では、競争が激しく、騎手同士の関係もかなり殺伐しています。そのため、精神的に耐えられずに、レネ・ダグラス騎手のように精神的に参ってしまったり、タイラー・ベイズ騎手のようにアルコール中毒などになってしまう人がいます。
ケンタッキーダービー戦線、いよいよ開幕。
年がが開けると、いよいよケンタッキーダービー戦線がスタートですね。
流し読みした記事の中で、 気になったものを並べてみました。
■1月というのはどういう時期か?
・1980年代のケンタッキーダービー馬は2歳で6〜7戦したあと12月から2月までは休んで、3月に1回叩いたあと最終プレップを使って本番、というケースが多かったのですが(比較的日本に近い)、最近のダービー馬は2歳戦をあまり使わない代わりに、12月末ないし1月から始動する増えました。フロリダやフェアグラウンズなど、暖かい地域の調整環境が整ってきたことが大きな要因です。そういう意味では1月のダービー戦線の重要度は増してきているといえます。
・近年のダービー馬で一番勝ちあがりが遅いのがMonarchos(2000)、Fusaichi
Peagasus(2001)ですが、彼らが勝ちあがったのが1月。つまりそろそろ新馬・未勝利戦を勝っておかないと、ダービーには間に合わないということです。去年わずか4戦でプリークネスSを制して話題となったBernardiniも1月4日にデビュー(4着)でした。
・アメリカの新馬戦は5.5〜7F戦がほとんど。中には8.5〜9Fの新馬戦もあるのですが、どちらかというとスタミナがあるというよりはスピード不足の馬が集まるという感じです。すくなくともデビュー緒戦は短い距離でスピードを試すパターンがほとんどです。
・そして、調教師は1月から2月ぐらいまでの間にこのようなスプリント戦で勝ちあがった馬達が、「スピードを2ターン戦の8.5ハロンに持ち込めるかどうか?」、つまりダービー戦線を戦う適性があるのかどうかを決めなくてはなりません。従ってレースでは、無難に勝ちに行くというよりは前半6ハロンをダービー並のペース(1分11秒台から12秒台前半)で走って、後半ばてるかどうかが試されます。ばててしまった馬は、即脱落していきます。
・先週の6ハロン戦、サンミゲルSを勝ったE
Z Warriorについて管理するバファート師は「父よりいいよ」と自身が管理していたExploitと比較して述べた。次走は1ハロン伸ばしてサンヴィセンテS。この時期のスプリンターは、ダービー目指すかサンシャインミリオン使うかで悩みます。
■ストラブシリーズ
・何度か書いていますが、私まったり競馬がみられるのがこのサンタアニタ開催が大好きで、中でもストラブシリーズは好きなレース。これは4歳限定のシリーズで、マリブS(7F)、サンフェルナンドBCS(8.5F)、ストラブS(9F)からなっています。このシリーズからサンタアニタH(10F)を制してスターになる馬も多く、近年でもSouthern
Image(2004)やRock
Hard Ten(2005)などがいます。
しかし、今年はちょっと頭数が少なくなりそうな予感。 ・土曜に行なわれるストラブシリーズ第2戦のサンフェルナンドBCSは、騎手も見どころ。第一戦のマリブSでBrother
Derek(7着)に騎乗したゴメス騎手は、Arson
Squad(8着)に、逆にArson
Squadに騎乗したソリス騎手がBrother
Derekに騎乗予定。マリブSではBrother
Derekは直線で大きな不利、Arson
Squadは大きな出遅れがあり、両者ともに敗れていた。この2頭と、バファート厩舎のMidnight
Luteが人気の予定。
■その他、西海岸のニュース
・土曜のサンラファエルSに出走するGrapelliという馬がいますがこの馬、サンダーガルチ×ベラベルッチという血統。 ベラベルッチはクロフネの全妹、つまりこの馬はクロフネの甥に当たります。ベラベルッチは現役時代アメリカで活躍したのでアメリカ競馬みない人でも名前ぐらいは覚えてる方もいるかもしれません。
現在のところ5戦1勝。前走ハリウッドパークで行なわれたオールウェザーの8.5ハロン戦を1.43.01というまずまずのタイムで勝ちあがっています。DRFは「sharp
beating maidens」と表現。近3走はオールウェザーなので、今回は注目です。
・Mr.Sekiguchiの復帰戦のベイヤー指数は99。これはnon-stakes戦としてはまずまずの数字。DBで集計したところ、スプリントG2の平均は104〜105ぐらいなので、このまま順調に行けば近いうちに重賞戦線で見ることができるかもしれません。もっとも、この近辺のベイヤー指数でうろうろしている馬はゴロゴロいるのも事実です。ちなみにまだ年始ということもあり、DRFでランク入りしています(笑)
・金曜日にサンタアニタで行なわれるパセアナHの注目はアルゼンチンから移籍のCarla
Stripes(ARG)。アルゼンチンで(GI・T1600m)を制した後、クレイグ夫妻に購入され、ロン・マカナリー厩舎に移籍してた。この夫妻とマカナリー師のコンビはこのレース名にもなっているアルゼンチン産のパセアナでも成功している。また同夫妻はケンタッキーダービーで7着した後、英ダービーを制したドクターデヴィアスの馬主でもある。
・昨年のラスパルマスHを制したBeautyandthebeastはサンゴルゴーニオHで5着に敗れたことにより、引退。この時期の牝馬は、引退して今年の繁殖シーズン種付けするかどうかで悩みます。
・Dixtie Meisterの今春最大の目標はドバイゴールデンシャヒーンを予定。